ゲッカザン、または、ツキオリヤマ。

その昔、月より降りてきた玉兎が神意を賜り、神として山を統べた―――と、言うのが名の由来とも言うが、あくまで伝説。

しかし確かに兎はやたら多く。
種族、色も様々様々なれど、最も多いのは耳が垂れた一族。

狐も多いが、隣山の主たる神が狐であり、そちらと非常に仲が良い事から、兎と狐の仲は珍しい事に非常に穏便である。間違っても、喰って喰われての仲では無い。 


森の奥に、獣人の村がひとつ存在する。 村としての名は無いが、八十刃神社(やそはじんじゃ)を祀る為、便宜的に八十刃村や、八十刃の村と呼ばれる事もある。
名刀、名刀匠を多く輩出するが、外に出て活躍をする者はほぼ無きに等しく、知る人ぞ知る、の村。また、場所を知る者は更に少ない。

此処より出る刀は銘とは別に全て鍔の部分に小さな玉虫色の紋が入っており、それが決して真似出来ぬものであること、その紋こそが村の剣である最大の証明とされることでも有名。
八十刃の刀は、言葉として「数多くの刃」である事を示すとは別に、所謂、銘柄としても一部では通じる。



八十刃神社


ヤソハジンジャ。

文字通り、数えきれぬ程多くの刀剣が奉納されている。
村で打たれた刀は一度全て、3日間この社に納めねばならない。
神は女神。名を、鬨産霊大神(ときむすびのおほかみ)と言い、刀剣と戦の神。自身も刀匠である。
また、共に社に住まい森を治める夫神が豊饒神である為、本殿の隣に並ぶ社殿には、穀物等も多く納められている。
男神の名は、天美穂神(あめのよしほのかみ)。
子供は二人。姉神を瑤須奈比賣(たますなのひめ)、弟神を鳴武彦(なるたけひこ)と言う。


――― が。


400年程前に、女神の代わりに男神が社を継ぎ、村を統べる様になる。
男神の火遊びが過ぎ、女神に愛想を尽かされ子供を連れて出て行かれた、という事実は、知らぬ者が1人もいない、可哀想な位村中の周知の事実。
幼子の寝物語や教訓話にすらされる程であるため、小さな子供も無論皆知っている。

知らぬは、今や父と二人で暮らす娘神のみだが、彼女の記憶は父により改竄されているため、真実を彼女にだけは話してはならぬのもまた、村中の暗黙の了解。





















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